「このまま客先常駐を続けて、5年後の自分はどうなっているんだろう」――SES時代の僕が、毎晩ベッドの中で考えていたことです。
この記事は、SESで消耗している人、フリーランスに興味はあるけど一歩踏み出せない人、あるいは「エンジニアとしてのキャリアに正解はあるのか」と悩んでいる人に向けて書いています。
僕はエンジニアキャリア8年目。SESエンジニアとしてキャリアをスタートし、人材開発マネージャー、フリーランスエンジニア、採用担当を経て、今は福祉事業のIT全般を担当するCTOをやっています。副業として始めたココナラでは85件の案件を受注して★5.0を維持、550名以上のエンジニアとキャリア面談をしてきました。
華やかに見えるかもしれないけど、ここに至るまで何度も「本当にこれでいいのか」と迷いました。この記事では、僕がキャリアの岐路で何を考え、どう決断してきたかを正直に書きます。
SES時代(2018-2020)――案件ガチャと消耗の日々
2018年4月、大学を卒業した僕はSES企業にエンジニアとして入社しました。
正直に言うと、最初は「エンジニアになれた」という高揚感がありました。大学時代にITパスポートを取り、研修でJava Silverも取得。これからバリバリ開発するぞ、と意気込んでいた。
でも、現実は違いました。
SESの宿命として、どの現場に配属されるかは自分では選べません。いわゆる「案件ガチャ」です。自分がやりたい技術と配属先で求められるスキルがかみ合わないことなんて日常茶飯事。「このスキル、次の現場で使えるのかな」と不安を感じながら、言われた作業をこなす毎日でした。
「このまま3年いたら、転職市場で通用しない人材になるんじゃないか」
背筋が凍るような感覚でした。
ただ、SES時代に学んだことがゼロだったかというと、そうでもありません。複数の現場を経験したことで「どんな環境でもまず適応する力」は身についた。それから、様々な企業の開発文化やマネジメントスタイルを外側から観察できたことは、後のキャリアで大きな財産になりました。
でも、それはSESを肯定する理由にはならない。学べることがあったとしても、もっと効率的に学べる環境は確実にあるから。
人材開発への転身(2020-2023)――エンジニアをしたまま教育マネージャーに
2020年10月、僕は同じ会社の中で人材開発部マネージャーに異動しました。
エンジニアからマネージャーへ。しかも、採用・教育・研修設計という、コードを書かない仕事へのキャリアチェンジ。
エンジニアのお仕事ももちろんありました。社内SEとして業務効率化のプログラムを書きながら、本業は教育メイン。
周りからは「エンジニア極めないの?もったいなくない?」と何度も言われました。
でも、僕の中では明確な理由がありました。
SES時代に感じた「キャリアを自分でコントロールできない」という痛み。それは僕だけじゃなく、多くのエンジニアが抱えている問題だと気づいたんです。だったら、エンジニアのキャリアを支援する側に回った方が、より多くの人の役に立てるんじゃないか。
その後、エンジニアとしての副業経験や採用人事の仕事へとキャリアを変えていく中で、僕は550名以上のエンジニアとキャリア面談を行いました。
550名。この数字は僕のキャリアを決定的に変えました。
面談を通じて見えてきたのは、エンジニアのキャリアの悩みには明確なパターンがあるということ。
- 「スキルが伸びない」と悩む人の多くは、環境ではなく学び方に課題がある
- 「転職したいけど踏み出せない」人は、情報不足が原因であることがほとんど
- 「何がやりたいかわからない」という人は、自分の経験を言語化できていない
この気づきは、僕自身のSES時代の経験とも完全に一致していました。
もうひとつ、550名の面談で強烈に印象に残っていることがあります。それは「あの時動いていれば」という後悔の言葉。30代後半、40代のエンジニアから何度も聞きました。5年前に転職していれば。3年前にフリーランスになっていれば。技術を勉強しておけば。
フリーランス独立(2024-)――ワクワクする方を選んだ結果
2022年12月、僕の人生を変える出会いがありました。
副業の1件目のお客さんとして出会った「Nさん」。後にフリーランスエンジニアのエージェントになるのですが、当時はマーケティングやWeb制作、営業に強い顔の広い方で、10歳年上のビジネスパートナーであり、兄のような存在です。
結果は、1年で累計100万円を突破、85件受注、評価は★5.0。
Nさんとの出会いをきっかけに副業が加速し、2024年にフリーランスエンジニアとして独立しました。
正社員を辞めてフリーランスになる。客観的に見れば「安定を捨てる」リスキーな判断です。
でも、僕にとっては逆でした。
独立後、僕はフリーランスエンジニアとしてAI関連の開発案件に携わったり、個人で受託開発を継続して受けていました。
年収は2倍に。
なぜこの数字を出せたのか。僕は技術力が飛び抜けて高いわけじゃない。でも、550名のキャリア面談で身につけた「相手の言葉にならない悩みを言語化する力」が、受託開発で圧倒的な武器になったんです。
お客さんが「こんなものを作りたい」と言う。でも、本当に解決したい課題はその言葉の裏にある。それを引き出して、技術で形にする。エンジニアのスキルと、人材開発で培ったコミュニケーション力が掛け算になった瞬間でした。
並行して別の会社に採用担当としてアサインし、エンジニア・営業・事務の中途・新卒採用も経験しています。「なぜそこで採用?」と思うかもしれないけど、僕にとって採用は「人の可能性を見極める仕事」。人材開発の延長であり、ビジネスの全体像を理解するための投資でした。
CTO就任(2025-)――非テック企業への「異世界転生」
2025年10月、僕は福祉事業を展開する会社にCTOとして正社員入社しました。フルリモートです。
福祉×CTO。一見すると「なぜ?」と思うかもしれません。テック企業のCTOならわかる。でも、就労支援をやっている会社のCTOって何するの?と。
僕はこれを「異世界転生」と呼んでいます。
ITの力をもって、非IT業界にチャレンジする。ゲームでいえば、魔法使いが剣と魔法の世界ではなく、魔法を知らない世界に転生して、そこで無双するイメージです。
この「異世界転生」を実現できたのは、SES→人材開発→副業・フリーランス→採用人事という一見バラバラに見えるキャリアが、実は一本の線でつながっていたからです。
- SESで、様々な企業の課題を外側から観察した
- 人材開発・採用人事で、550名のエンジニアや非エンジニアと対話し「非ITの人がITに何を求めているか」を理解した
- フリーランスで、技術とコミュニケーションの掛け算でクライアントの課題を解決してきた
エンジニアでありながら、非IT業界の人たちの言語で話せる。技術を「翻訳」できる。これが僕の市場価値です。
非IT業界でのCTOという選択は、まさにその潮流に乗っている。AIをどう使うかの判断には、技術だけでなく倫理観やビジネス文脈の理解が必要だし、自分専用のAI環境を構築して業務を自動化することもできる。テック企業にいなくても、エンジニアとしての価値を最大化する道はいくらでもあるんです。
各岐路で僕が使った判断基準
振り返ってみると、僕がキャリアの岐路で使ってきた判断基準は3つあります。
1. 「ワクワクする方」を選ぶ
安全な道と冒険の道があったら、迷わず冒険を選ぶ。これは高校時代からの癖です。成績優秀者の推薦を蹴って大学受験に挑んだのも(見事にスベりましたが)、SES常駐エンジニアを辞めて人材開発に移ったのも、正社員を捨ててフリーランスになったのも、すべて「そっちの方がワクワクするから」。
2. 「反省はしても後悔はしない」
僕の座右の銘です。選択の結果がどうであれ、自分で選んだことには後悔しない。うまくいかなかったら反省して次に活かす。他人に決められた失敗は後悔になるけど、自分で選んだ失敗は経験になる。
3. 「点と点はつながる」と信じる
オンラインゲームにハマったことがITへの入り口になった。水泳インストラクターの経験がコーチング力の原点になった。大学のときのサークルへの集客がマーケティングを学ぶきっかけになった。その時は「楽しいから」やっていただけのことが、後からキャリアの武器になる。
逆に、SESのスキルミスマッチや、中学時代の理不尽な部活顧問からは「こうはなりたくない」という反面教師を得ました。楽しい経験も、辛い経験も、どちらもキャリアの養分になる。
キャリアに正解はない、でも「自分で選ぶ」ことには価値がある
8年間のキャリアを振り返って、ひとつだけ確信していることがあります。
SESが悪いわけじゃない。フリーランスが正解でもない。CTOになったから偉いわけでもない。大事なのは、その選択を自分の意思で行ったかどうか。
「会社に言われたから」「周りがそうしてるから」「安定してるから」――こういう理由で選んだキャリアは、うまくいっている間は問題ない。でも、壁にぶつかった時に踏ん張る力が出ない。だって、自分で選んだわけじゃないから。
僕がSESからの転身を決められたのは、環境のせいにするのをやめて、自分で情報を取りに行ったからです。僕がフリーランスで結果を出せたのは、人材開発の経験を「無駄だった」と切り捨てずに武器に変えたからです。
エンジニア×コミュニケーション能力×AI×非IT。この掛け算が僕の現在地です。あなたにも、あなただけの掛け算がきっとある。
「いつか辞める」と言い続けて5年経つリスク
ここまで読んで、「自分もいつかは動かなきゃ」と思った人。
ひとつだけ、はっきり言わせてください。
550名のキャリア面談で、僕が最も多く聞いた言葉のひとつが「いつか転職しようと思ってたんですけど」でした。そしてその「いつか」を5年言い続けている人を、何十人も見てきました。
5年間で何が起きるか。
- 技術トレンドは入れ替わる。 5年前のスキルセットが今の市場で通用するとは限らない
- 年齢は上がる。 未経験領域へのチャレンジは、若いほどハードルが低い
- 家庭環境が変わる。 結婚、子育て、住宅ローン。動ける条件はどんどん狭まる
- 「まあいいか」が習慣になる。 不満が日常になると、変化への感度が鈍る
特にAI時代の今、変化のスピードは加速しています。「コードを書くだけのエンジニア」の価値は相対的に下がり、ドメイン知識やコミュニケーション力との掛け算が求められる。その掛け算を作るには、今の環境の外に出る必要があるかもしれない。
この記事を書いている理由
僕がこの記事を書いているのは、550名のキャリア面談で聞いた「あの時動いていたら」という後悔の声が、今も耳に残っているからです。
30代後半で「SESから抜け出しておけばよかった」と言う人。40代で「フリーランスに興味があったけど、踏み出せなかった」と言う人。その人たちの声を聞くたびに、僕は「この情報を、もっと早く届けられていたら」と思いました。
キャリアに悩んでいるのは、あなただけじゃない。そして、動いた先に待っているのは、失敗じゃなくて「経験」です。
僕自身、推薦を蹴ってスベった大学受験も、スキルミスマッチに苦しんだSES時代も、全部が今のキャリアの養分になっています。反省はしても、後悔はしていません。
この記事が、あなたの「今日」を変えるきっかけになれば嬉しいです。
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